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各国のGHG削減目標出そろう(COP15後)

 昨年コペンハーゲンで開催されたCOP15合意書では、『気候変動枠組条約の附属書I締約国(先進国)は、2010年1月31日までに別表1の書式で2020年時点の数量化された排出目標を個別にあるいは共同で実行することを約束する。(http://ja.wikipedia.org/wiki/第15回気候変動枠組条約締約国会議)』としている。
これに対してUNFCCCは、55カ国からそれぞれの削減・排出目標を受け取ったことを2月1日に明らかにした。(http://unfccc.int/2860.php)。これらの国からのGHGガス排出量は地球全体の78%を占めているという。さてその内容は、COP15において各国が提示した目標値・取り組みの通りとなているため、先導的な国にとっては不満足な内容であるとともに、このレベルではGHGガス濃度を十分に低いレベルで安定化できるわけではない。しかし、55カ国が自国の削減目標を国際的に公約したことには意義がある。各国の対策の中ではノルウェーは先進的、NZの付帯条件が面白い。また米国もそれなりの意欲を示したものになっていると思う。が、道まだ遠し。

 

Emissions reduction in 2020

Base year

オーストラリア

-5% から最大 -15% ないし -25% GHGガス濃度 450 ppm CO2換算以下に安定化することに世界が同意する場合に2000年比-25%に削減する。

2000

カナダ

米国で成立した削減目標に合わせて-17%

2005

クロアチア

-5% ;暫定的目標値。EU加盟によって、EU目標値に置き換え。

1990

7/CP.12

EU
ただし全EU加盟国がAnnex1メンバー国にはなっていない

20%/30%
 2012年までの国際的・統括的合意の一部として、2020年の削減目標を90年比30%に変更するという提案を繰り返し主張する。

1990

日本

-25%:ただし全ての主要国が参加する公正で効果的な枠組みが構築されることを前提とする。

1990

カザフスタン

-15%

1992

ニュージーランド

-10%-20%。ただし下記の包括的な国際的合意が成立することを条件とする。

・平均気温上昇を2℃以下に制限するための過程としての国際的合意。
・先進国はNZと同等の努力を行うこと。
・先進的で主要な発展途上国が自国の能力に対して先進国と同等の努力を行うこと
LULUCFland-use change and forestry)に関する効果的な規則が策定されること
・広域的な国際炭素市場において全額償還方式が導入されること。

1990

ノルウェー

30-40%
2012
年までの国際的・統括的合意の一部として、主要排出国が揃って平均気温上昇を2℃以下にするための排出量削減に同意することを前提に、40%に拡大する。

1990

ロシア

15-25%* ロシア語なので未確認だが、COP15開催時に同じであろう。

1990

米国

米国の来るエネルギー・気候法に準拠して、最大17%の範囲。
ただし審議中の法案において、2050年における最終目標値-83%に向けた過程として、2025年までに2005年比-30%2030年までに同-42%

2005



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サハリンLNG 100隻目出航

 サハリン・エナジー社によると、この1月、プリゴロドノエのLNG基地から100隻目のLNGタンカーが出港したそうである。船は3隻あるサハリン・エナジー社専用船のひとつ“グランド・アニワ号”で、これは2009年3月に初めてのLNG積出に就航した船と同じである。第1隻目も100隻目も仕向け地は日本だそうだ。ここまでで550万トン以上のLNGが出荷されたという。ここまでの実績を背景にサハリン・エナジー社アンドレイ・ガラエフCEOは、ロシアはサハリンでのLNG生産を通じてアジア太平洋地域への安定的なエネルギー供給元となり、同時に国際的なエネルギー安全保障を進展させる役割を担いつつあることを、誇らしげにコメントしている(http://www.sakhalinenergy.com/en/default.asp?p=channel&c=1&n=362、より)。ちなみにサハリン産LNGの50%以上が日本向けに輸出されているそうである。このほかには韓国、インド、クウェート、中国、台湾、だそうである。

 さてサハリンのエネルギー開発では、昨年からサハリン3の動きが活発になっている(・・・“いた、しかし”・・・かもしれない)。昨年7月には、三井物産・三菱商事のグループがサハリン3の権益獲得に前進しているとの情報がマスコミに流れ、海外にも配信された。これは、ロシア政府がサハリン3とサハリン4の開発について、ロイヤル・ダッチ・シェル社と協力するための準備を進めていることを、プーチン首相が発表したことと、現在生産しているサハリン2の施設を共用できるなどのメリットがあること、日本の両社はシェル社とともにサハリン2に参加していること、などからの推測だったのだろう(日本の両社もかねてからサハリン3への参加に前向きだったことが知られていたこともあり)。しかしその後はふっつりと情報が出てこないので、実際どうなのかはわからない。・・・これはよくあること(色んな情報が飛び交ったり、沈黙したり)。とにかく、サハリン3が保有する鉱区の天然ガス埋蔵量が非常に有望であるので、今後の動向に注目はしておこう。

 ところで、ロシア北極圏における重要なプロジェクトとして、シュトックマン・ガス田(バレンツ海沖)の開発がある。西シベリア地帯のガス生産が陰りを見せつつあるなか、2030年には世界の天然ガス需要の25%をロシアが供給するという目標のもと、シュトックマン・ガス田の開発が進められている。世界最大級の埋蔵量3.8兆立方メートルがあると言われているのだが、ムルマンスクから550kmも沖合にあること、北極海の厳しい自然条件などから、膨大な開発費用と高度な技術を要するため、一筋縄では行っていないようである。それでも、ガスプロムのほかにフランスのTotal、ノルウェーの Statoil Hydroによる合弁企業によって、2014年からの出荷を目指しているところである。このシュトックマン開発に暗雲が!?(ガスプロムはシュトックマン・ガス田開発を断念しなければならなくなる恐れ))という報道がロシアで出たらしい。北極海の開発には本当に高いリスクが付きまとう。

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事業仕分けイベントが終わって

 事業仕分けイベントが見せたものは,“その事業分野の専門家ではないが,事業を執行して国全体の発展や福祉の向上に取り組もうという意識のある市民の目線において,審査を受け,理解を得られるものとなっていなければ,いかに重要な事業であっても,予算配分させませんよ“という政策メッセージに,結果としてはなってしまったのではないだろうか。こう書いたのは,これが,政府が意図したことであったとは限らないと思われるからである。
 そしてこの潮流は,事業を計画する側への要求だけでなく,市民レベルにおいても,社会基盤整備などの政府・地方自治体の事業に対する積極的な関与を求めるという点で,市民にも要求を突きつけるものである。すなわち,政府予算枠のなかにおける公共事業・社会資本整備の割合が大きく減少している中で,地域の社会基盤整備をしっかり進めるためには,地域住民や地域の経済・産業界が,自分たちの将来像をしっかり見据えて,行政と政治に働き掛ける,というプロセスがより明示的になることを示唆するものである。社会基盤は整備してもらうのではなく,整備してほしいものや機能などを積極的に要請し,またそれが社会の総意であったり,社会の発展に大きく役立つことを,受益者サイドがきちんと説明することが重要になるだろう。
 社会資本整備の場においては,10年程前からアカウンタビリティの重要性が議論,注目されてきた。それももちろん重要であるが,住民はどちらかというと受身の構図であった。そこでは,行政・事業者が住民や関係者に,事業の趣旨・目的,内容,方法などをよく説明し,また意見をフィードバックして,相互理解の上に適正で合理的な事業を進めるといった構造であったと思う。
 しかし,本項前段で述べた潮流がより鮮明になると,事業を実施する地域の市民が,政府だけでなく,他の地域・市民に対して ,これこれの予算を投入して事業を行う必要性を明示するという視点でのアカウンタビリティにも意識する必要が出てくるのかもしれない。この一連の作業には,複数のレベルで多くのプレーヤーが関係し,説明・調整・合意形成を繰り返すことになり,ゴールへの道は結構長いものになりそうである。これらのプロセスをわかりやすく,システマチックに,手順よく,取り行うことが必要になるであろう。このようなコーディネートこそ,コンサルタントに求められる業務の一つとなるであろう。

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社会基盤整備の行方は?

 リーマンショクに端を発した世界的な信用収縮と実体経済の減退が依然として続いており,我が国の経済・産業界も低迷,雇用悪化が継続しているようである。また税収の減少により,国の財源不足は重症化している。社会資本整備重点計画の3月の閣議決定時点以降,公共事業をとりまく経済状況は,さらに厳しいものになっていると考えるべきである。
 あわせて,長年続いた自民党政権が民主党政権に代わり,選挙で掲げられたマニフェストに基づく新しい政策方針が提示され,政策国会審議の方法や公共事業予算の編成方針には大きな方向修正が行われることとなった。この中で社会基盤整備においては,ダムによる治水からの脱却,全般的な事業予算の縮減などを強く推進することになった。
 国民の目はここ数年来,土木分野が主体となる社会資本整備事業に対し,“不公正な入札,官民癒着により土木業界は不当に大きな利益を受けているのではないか,その見返りとして土木業界が関連官僚の天下り先となるとともに,様々な団体を移って高給と高額の退職金を受け取る省庁幹部OBの存在“,という利権構造を拡大想起して,マスコミにおいてたびたび批判が繰り返されてきた(これが全てその通りとは思っていないが)。これに対し,関連事業界の対応は,退職官僚の再就職に関するガイドラインや規制の導入,公共事業のコスト縮減,入札プロセスの改革,透明性・説明責任を事業執行プロセスの中に取り入れていくなどの対策を講じてきた。しかし自民党政権下で続けられてきた予算編成プロセスやその内容は,国民にはあまりにも複雑かつ不透明で,そもそも国会審議のTV中継を見ようとする国民などほとんどいない。その背後では,省益確保を動機とするような予算・事業要求,事業実施それ自体が目的となった事業,そうした問題・課題の調整機能の働いていない国会と省庁・官僚の関係の問題などが(社会基盤整備分野に限らず),少しずつ認識されるようになってきていた。
 1次補正予算の見直し,大きな注目をあびた来年度予算の事業仕訳は,民主党政権がこうした問題に手を入れつつあることを感じさせるとともに,予算編成・公共事業の計画・執行プロセスに対する国民の関心も高まり始めた。この手法が最善の解であるかどうかは疑問であるが,水車が回り始めた可能性は高い。社会基盤整備・公共事業が,その1次目的である施設機能を発揮するだけでなく,建設産業を介して,地方の雇用や経済ならびに地域コミュニティを維持してきたことは明白である。しかし今日,社会基盤の整備水準は多くの分野でかなりの高位に達しており,今後はストックの維持・管理に比重が移りつつある。そして地域の本来の要請は,土木工事がいつまでも続くことではなく,様々な基盤や環境の整備と支援を通じて経済・産業が育成され,コミュニティが存続していくことであろう。社会基盤は,これらの目標を実現するための1つの,ただし依然として重要な分野であることは変わりないだろう。しかし,社会基盤整備事業をとりまく社会情勢において,事業を展開する方向ベクトルが,これまでとは異なるものになりつつあるのではないか,と感じられる。

とまぁ,この業界に身を置いているので微妙なところもあるのだが,一歩離れて違う目線で見直すことも大事であることを,事業仕分けで必殺仕分け人に一緒にたたかれているように感じながら,考えているところ。

 

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北極海の漁業規制をめぐる動き(北米)


 
 合衆国漁業委員会(詳しくはThe North Pacific Fishery Management Council,NPFMC)は今年2月,アラスカ沖の北極海の広大な範囲(ベーリング海峡北部からアラスカの北部沿岸沖のボーフォート海,15万平方マイル以上)における漁業活動を禁止する動議を可決した。これは,地球気候変動の結果,当該海域での海氷勢力が縮退し,漁船などの航行が可能になりつつある事態を踏まえ,当該海域の脆弱な環境システムを保全するための予防的な措置として決定したものである。NPFMCは,“この措置は予防的かつ保護的なものであり,将来可能となるであろう北極海での漁業に対して,予防原則と保護的なアプローチをとるためのガイダンスとなるものである”と述べている。この決定は,地球気候変動に起因して禁漁区を設ける初めてのものとなり,産業界からも環境保護グループと同様に多くの賛同が集まる結果となった。この禁漁措置は,気候変動がこの海域に与える影響に関する科学的な調査が完了するまで継続するとしている。
 現時点では,この海域での商業的な漁業は行われていないが,漁業関係者からの関心は高まっている状況にあるという。たとえば,海水温の上昇により太平洋サケの回遊範囲が北上する傾向があり,北極海が漁場として現実味を帯びてきている。なお,先住民族による漁業については従前どおりに行うことが認められている。
arctic_management_area.jpg←禁漁区(NOAA Fisheries News Releases,August 20, 2009)に加筆

 漁業管理計画が策定されるまでは,北極海での商業漁業の禁止措置をとるように提言を続けてきたWWFは,この決定に対してすぐに,“これは,アラスカの漁業関係者による勇気ある,かつ倫理的な決断である”との賛同を示す声明を発表した。ただしこの措置は,北極海のほんの一部を律するに過ぎず,北極海に漁業権を有する他の国においても,米国の決定に追従していくことを求めている。

 その後今年8月,アメリカ政府商務省は,アラスカ沖北極海域(ボーフォート海およびチュクチ海)における漁業(魚類および貝類・甲殻類)の禁止措置を宣言した。この措置は,上記NPFMCの決議に基づいて,これまでは商業漁業が行われてこなかった無垢の海域の保全に関する予防的アプローチをとるものである。ただしNPFMC以外の組織で管理されている太平洋サケおよび太平洋ハリバットには適用されない。また先住民族の生活のための漁業は認められている。この措置では,科学的な調査・研究が行われ,厳密なモニタリングと厳格な漁獲量規制・漁具規制・放棄の規制および漁区規制のもとで,はじめて,将来漁業が許可されることになるであろうと述べている。
 この決定に対し,9月初め,隣国カナダが正式な抗議を米国政府に提示した。というのは,米国が示した禁漁区の西端に,カナダ・米国双方が領海として主張している海域が含まれているからである。カナダは今年4月時点で,米国の今回の漁業規制に関して公式に異議を表明していたが,外交通達が出たのは9月となった。なお,このボーフォート海紛争は,1825年のロシア・英国間の国境協定に始まり,多くの海洋法およびその慣習を背景に,現在は米国・カナダ間で係争されているものである。カナダは,アラスカ州とユーコン州の間の陸の国境線を海上まで延長する領海を主張,米国は海岸線から垂直の境界線を主張している。このため,丁度三角形の海域において,両国の主張が競合している。ただしカナダ政府においても,科学的な調査・分析を通じて適切な漁業のあり方が決定されるまでは,同国の北極海海域における商業漁業の禁止措置を取ることを検討しているという。

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