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社会基盤整備の行方は?

 リーマンショクに端を発した世界的な信用収縮と実体経済の減退が依然として続いており,我が国の経済・産業界も低迷,雇用悪化が継続しているようである。また税収の減少により,国の財源不足は重症化している。社会資本整備重点計画の3月の閣議決定時点以降,公共事業をとりまく経済状況は,さらに厳しいものになっていると考えるべきである。
 あわせて,長年続いた自民党政権が民主党政権に代わり,選挙で掲げられたマニフェストに基づく新しい政策方針が提示され,政策国会審議の方法や公共事業予算の編成方針には大きな方向修正が行われることとなった。この中で社会基盤整備においては,ダムによる治水からの脱却,全般的な事業予算の縮減などを強く推進することになった。
 国民の目はここ数年来,土木分野が主体となる社会資本整備事業に対し,“不公正な入札,官民癒着により土木業界は不当に大きな利益を受けているのではないか,その見返りとして土木業界が関連官僚の天下り先となるとともに,様々な団体を移って高給と高額の退職金を受け取る省庁幹部OBの存在“,という利権構造を拡大想起して,マスコミにおいてたびたび批判が繰り返されてきた(これが全てその通りとは思っていないが)。これに対し,関連事業界の対応は,退職官僚の再就職に関するガイドラインや規制の導入,公共事業のコスト縮減,入札プロセスの改革,透明性・説明責任を事業執行プロセスの中に取り入れていくなどの対策を講じてきた。しかし自民党政権下で続けられてきた予算編成プロセスやその内容は,国民にはあまりにも複雑かつ不透明で,そもそも国会審議のTV中継を見ようとする国民などほとんどいない。その背後では,省益確保を動機とするような予算・事業要求,事業実施それ自体が目的となった事業,そうした問題・課題の調整機能の働いていない国会と省庁・官僚の関係の問題などが(社会基盤整備分野に限らず),少しずつ認識されるようになってきていた。
 1次補正予算の見直し,大きな注目をあびた来年度予算の事業仕訳は,民主党政権がこうした問題に手を入れつつあることを感じさせるとともに,予算編成・公共事業の計画・執行プロセスに対する国民の関心も高まり始めた。この手法が最善の解であるかどうかは疑問であるが,水車が回り始めた可能性は高い。社会基盤整備・公共事業が,その1次目的である施設機能を発揮するだけでなく,建設産業を介して,地方の雇用や経済ならびに地域コミュニティを維持してきたことは明白である。しかし今日,社会基盤の整備水準は多くの分野でかなりの高位に達しており,今後はストックの維持・管理に比重が移りつつある。そして地域の本来の要請は,土木工事がいつまでも続くことではなく,様々な基盤や環境の整備と支援を通じて経済・産業が育成され,コミュニティが存続していくことであろう。社会基盤は,これらの目標を実現するための1つの,ただし依然として重要な分野であることは変わりないだろう。しかし,社会基盤整備事業をとりまく社会情勢において,事業を展開する方向ベクトルが,これまでとは異なるものになりつつあるのではないか,と感じられる。

とまぁ,この業界に身を置いているので微妙なところもあるのだが,一歩離れて違う目線で見直すことも大事であることを,事業仕分けで必殺仕分け人に一緒にたたかれているように感じながら,考えているところ。

 

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