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Eyes On the North

 昨年末から準備を初め,どうにか形になってきたので,このBlogにリンクを入れた,”Eyes On the North”

 地球規模での気候変動は,広域的な温暖化への道を登り始めているという見解が,どうやら間違いないようである.もとより温暖化肯定派であったのだが,,,昨年初冬に,北極海に関する委員会の委員としてロシア・ノルウェーに出張した際,ご一緒した科学者の方や,向こうで合った研究者らの話を聴いて,その意を強くした.
北極海やオホーツク海では,温暖化の影響が海氷勢力の減退として顕著に表出する. 最近のこれら地域における海氷勢力の継続的な減退は,
この気候の温暖化が,北極振動や長期的で周期的な気候変動の影響で,温室効果ガスによる温暖化ではないという見解に腰掛ける余裕のないことを感じさせる.地球環境および社会・産業の保全にとりかかっているうちに,もし温暖化の見立てが間違いであったことが判明しても,『あぁ,ああいうふうにならなくて良かった.』と胸をなでおろすことができるのであるから,良いではないか.

一方で,この気候変化は,これまで手の届かなかった極地域およびそこの資源活用への道を意識させるようになってきた. エネルギー資源を筆頭に,各種天然資源に対する需要は増大しており,北極圏に埋蔵する種々の資源への関心は高まっている.また,現存する基幹航路のセキュリティ悪化に対する代替航路としての北極海航路にも注目が集まるようになってきた.

このような中で,これまで寒冷海域における工学研究・開発・環境問題にかかわってきた成果・知識・情報を整理・統合して,この領域に関す るナレッジベースを提供する場をつくるとともに,日本におけるプレゼンスを示そう,と,大それたことを志し,友人Kを引き入れて,準備を始めた.”話だけで立ち消えになっては情けない”と,自分に足かせをはめるため,webを立ち上げてこの活動を衆目にさらそう,そうして少しは誰かのためにならなくては・・・

そんな経緯で始めたサイトがこれ,Eyes On the North(http://eon.yu-nagi.com/である.さあ,どこまでできるか,今年のチャレンジである.

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北極海の漁業規制をめぐる動き(北米)


 
 合衆国漁業委員会(詳しくはThe North Pacific Fishery Management Council,NPFMC)は今年2月,アラスカ沖の北極海の広大な範囲(ベーリング海峡北部からアラスカの北部沿岸沖のボーフォート海,15万平方マイル以上)における漁業活動を禁止する動議を可決した。これは,地球気候変動の結果,当該海域での海氷勢力が縮退し,漁船などの航行が可能になりつつある事態を踏まえ,当該海域の脆弱な環境システムを保全するための予防的な措置として決定したものである。NPFMCは,“この措置は予防的かつ保護的なものであり,将来可能となるであろう北極海での漁業に対して,予防原則と保護的なアプローチをとるためのガイダンスとなるものである”と述べている。この決定は,地球気候変動に起因して禁漁区を設ける初めてのものとなり,産業界からも環境保護グループと同様に多くの賛同が集まる結果となった。この禁漁措置は,気候変動がこの海域に与える影響に関する科学的な調査が完了するまで継続するとしている。
 現時点では,この海域での商業的な漁業は行われていないが,漁業関係者からの関心は高まっている状況にあるという。たとえば,海水温の上昇により太平洋サケの回遊範囲が北上する傾向があり,北極海が漁場として現実味を帯びてきている。なお,先住民族による漁業については従前どおりに行うことが認められている。
arctic_management_area.jpg←禁漁区(NOAA Fisheries News Releases,August 20, 2009)に加筆

 漁業管理計画が策定されるまでは,北極海での商業漁業の禁止措置をとるように提言を続けてきたWWFは,この決定に対してすぐに,“これは,アラスカの漁業関係者による勇気ある,かつ倫理的な決断である”との賛同を示す声明を発表した。ただしこの措置は,北極海のほんの一部を律するに過ぎず,北極海に漁業権を有する他の国においても,米国の決定に追従していくことを求めている。

 その後今年8月,アメリカ政府商務省は,アラスカ沖北極海域(ボーフォート海およびチュクチ海)における漁業(魚類および貝類・甲殻類)の禁止措置を宣言した。この措置は,上記NPFMCの決議に基づいて,これまでは商業漁業が行われてこなかった無垢の海域の保全に関する予防的アプローチをとるものである。ただしNPFMC以外の組織で管理されている太平洋サケおよび太平洋ハリバットには適用されない。また先住民族の生活のための漁業は認められている。この措置では,科学的な調査・研究が行われ,厳密なモニタリングと厳格な漁獲量規制・漁具規制・放棄の規制および漁区規制のもとで,はじめて,将来漁業が許可されることになるであろうと述べている。
 この決定に対し,9月初め,隣国カナダが正式な抗議を米国政府に提示した。というのは,米国が示した禁漁区の西端に,カナダ・米国双方が領海として主張している海域が含まれているからである。カナダは今年4月時点で,米国の今回の漁業規制に関して公式に異議を表明していたが,外交通達が出たのは9月となった。なお,このボーフォート海紛争は,1825年のロシア・英国間の国境協定に始まり,多くの海洋法およびその慣習を背景に,現在は米国・カナダ間で係争されているものである。カナダは,アラスカ州とユーコン州の間の陸の国境線を海上まで延長する領海を主張,米国は海岸線から垂直の境界線を主張している。このため,丁度三角形の海域において,両国の主張が競合している。ただしカナダ政府においても,科学的な調査・分析を通じて適切な漁業のあり方が決定されるまでは,同国の北極海海域における商業漁業の禁止措置を取ることを検討しているという。

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北極海が話題になっている

北極圏とは北極点を中心とした高緯度地域のことで,夏に白夜になる北緯6633分以北の地域を指すことが多い。北極海のほか,北米大陸北部,ユーラシア大陸北部,グリーンランドおよびアイスランドやフェロー諸島などの島が,概ね北極域と呼ばれる地域といえる。ツンドラ気候区,永久凍土地帯,および最も暖かい月の平均気温が10℃を超えない地域などがこれに含まれる。また研究分野では,ベーリング海やオホーツク海もこのArcticの対象としてとらえられることが多い。
このような北極圏は,全世界の陸地のおよそ1/6の面積,30百万km224のタイムゾーンが存在する広大な領域であるとともに,30以上の民族,約4百万人が居住する。また多くの未開発の天然資源を擁している。

 地球規模の気候変動は,極域において顕著な環境変化として顕在化しつつあると言われる。科学的予測の精度には依然として課題と議論の余地が指摘されている。しかし北極域では近年,夏期における海氷勢力が減退する傾向が続いており,ついには北極海航路海域から海氷が消滅する現象が確認されている。これは,1990年代には見られなかった現象である。

 こうして海氷勢力の減退が顕在化するとともに,北極域の海洋底に埋蔵されていると考えられている各種の天然資源開発,および北極海を通ってアジアとヨーロッパを結ぶ北極海航路(NSRおよび北西航路)による海上輸送に関し,注目が集まってきている。北極域を国土や領海に有する関係国は,以前より北極評議会を発足させ,閣僚会議を隔年で開催してきた。そこでは,北極域における持続可能な開発と稀少な自然環境の保全を主題に,相互の調整,規則づくりに向けて技術的・科学的・政策的な活動と議論が行われてきた。そこに,近年の国際的な天然資源争奪戦,国連海洋法条約における大陸棚の拡張申請・確定への協議の進展などが契機となって,北極圏以外の地域にある国家が北極評議会へのオブザーバー参加を求めるようになった。また北極海航路に関して主要な船級協会も活発な活動を展開するようになった。

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