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設計規格国際化の背景

 構造物の設計に性能設計の考え方が導入され,国内基準の改定が進められている.その背景には,構造物の設計の合理化,コスト縮減,アカウンタビィテイの向上などに加え,国際的な技術規格統一の動きへの対応と,我が国の技術分野の国際的な地位向上をはかる狙いがある.

◆国際共通規格策定の背景
技術基準の国際化のこれまでの流れを簡単に整理してみる.まずはブレトン・ウッズ協定にまでさかのぼることになる.この協定は,

1929年に始まる世界大恐慌に際し,各国がブロック経済圏をつくるという保護貿易主義の台等が第二次世界大戦の一因となったという反省と,疲弊・混乱した世界経済を安定化させ,円滑な国際貿易を実現するために,1944年,アメリカのブレトン・ウッズで締結されたもの.

である.この協定において,国際通貨基金(IMF)および国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定され,1945年に発効した.さらに,このブレトン・ウッズ体制の枠組みとして,自由貿易の促進を目的とした,"関税および貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade;GATT)"が1948年に発足した.GATTは,加盟国が相互に同等の条件で貿易取引を行う無差別原則,輸入制限の撤廃,関税の軽減を目的とするものであった.加盟国による交渉(ラウンド)は計8回開催された.
この間に世界はEU統合,APECやASEANなどアジア・太平洋地域における国際経済協力など,多角的な経済圏を志向する情勢が進展し,GATTの枠組みでは不十分となってきた.同時に,GATT当初からの対象であった鉱工業製品に関する技術規格・基準の統合が進展し,ユーロコード,ISOコードが次々と整備されてきた.また,ITをはじめとして,人・物・金融等さまざまな経済活動においてグローバル化が進展してきたため,GATTに代わる新たな枠組みが必要になってきた.

このようななか,1994年,第8回目にあたるウルグアイ・ラウンドでは,GATTに代わる強固な基盤をもつ国際貿易機関を設立することが議論され,1995年1月よりガットは世界貿易機関(WTO)に発展的に解消することになった. こうしてWTOは国際機関として,物品貿易だけでなく金融,情報通信,知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場となった.
WTO加盟国が受諾しなければならない附属書のなかにTBT協定がある.これは加盟国全てに対して,規格類を国際規格に整合化することで,不必要な貿易障害を取り除くことをもとめている.そこでは,技術基準に関する強制・任意規格は国際規格に準拠すること,およびその適合性評価手順はISO/IECガイドに準拠することが定められた.その適用範囲は、「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」が適用されるものを除き,工業製品及び農産品を含む全ての産品について適用され,製品に対する仕様類の要件,生産及び活動に対するマネジメントシステム,それらを用いるための技術仕様等を規格対象としている.
TBT協定によって,各国の国内規格作成過程の透明性,国内規格の国際的な整合性が図られることとなり,国際標準化機関によって制定された国際規格の普及,導入,整合が急務となったわけである.

◆ウィーン協定
 TBT 協定によって国際規格への適合性評価手順の標準となったISOは,1991 年にCEN との間でウィーン協定を結び,欧州標準化委員会CEN で先行的に規格策定作業が行われる規格について,ISOはCEN での作業結果をISO の規格原案として採用することが可能となった.おりしもCENでは,構造物の設計に関する規格の検討が進められており,ついに2001年に,信頼性設計法を基本とする性能規定型の設計規格であるEN1990ユーロコード『構造設計の基本』が発行された.こうしてISOにおける構造設計に関する規格においても,CENをベースとする性能規定型の設計法が導入されることが不可避となったのである.

◆ユーロコード

 欧州において加盟各国は,EU域内の内部市場に対し,国内市場を合併させ,境界の無い統一市場を形成することに合意している.この実現のための行動の一環として,各種の技術基準“ユーロコード“策定が進められていた(これは現在も続いている).そしてついに2001年10月,EN1990ユーロコード『構造設計の基本』が発行された.このEN1990は,あとに続くEN 1991 から EN 1999までの9つのコードと一緒になって,EU加盟国共通に,建築物,土木構造物,サイロ,タンクなどの設計において考慮しなければならない安全性,供用性,耐久性に関する総合的な方針と指針を示す,初めての設計基準であった.その適用範囲は施工,コンクリートや鋼などの材料,地盤,耐震,耐火などの問題などにも及ぶ包括的なものとなっている.ウィーン協定を背景に,このユーロコードは,ISO2394(構造物の信頼性に関する一般原則)規格案の検討作業においても,積極的に取り上げられるべく議論が進められていた.

◆我が国の設計規格の改訂
このような状況のなか,建設活動の国際化・ボーダーレス化が進展するとともに,WTO/TBT協定のもと,各種の資材・製品規格の場においても,国際標準化への取組みが進展していた.同時にISOおよびCENを中心に,技術規格の国際標準化が活発化してきていた.わが国においても,欧州を中心に進行している技術規格の国際標準化活動に対応し,国内規格と国際規格の間の整合性を確保するとともに,耐波設計分野や耐震設計分野など,国際的にも有効かつ先進のわが国の技術を積極的に導入させることが緊急の課題となった.
わが国の構造設計の分野においては,土木構造物と建築構造物,また鋼構造・コンクリート構造などのように,構造物の性質・種別ごとに技術標準類を定めてきた.しかしISOおよびユーロコードにおいては,構造物として統一的に規格が制定されており,また材料の技術規格も日本の体系とは異なっている.そこで当時の建設省が中心となり,土木・建築分野の設計に関する基本的な考え方を示すものとして,平成14年3月,国土交通省によって「土木・建築にかかる設計の基本」が策定されたのである.
ふう~,汗;;;



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