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気候変動は不可避?
Posted on Friday, Sep 25, 2009 15:21
地球温暖化対策を主議題とする昨年の洞爺湖サミットに先立って開催されたG8環境大臣会合において,2007年6月のハイリゲンダム・サミットにおける,『世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して2050年までに半減することを真剣に検討する』という合意を出発点に,地球規模の長期目標に関する共有ビジョンへの合意をめざすという強い政治的意志が表明された.
しかし,途上国を含んでの『世界で半減』は容易ではない.現在,世界の温室効果ガスのほぼ半分は中国やインド(もう途上国とは言えないだろう)および途上国から排出されている.これらの国々における排出量半減を達成するというのは非現実的であり,またその国々が同意するとは思われない.RITE(財団法人地球環境産業技術研究機構)によると,『2050年に世界全体の排出を今の半分にするためには,先進国からの排出をゼロとしても,途上国は約60%削減しなければならない』,ためである.
そこで前出のRITEは,CO2 濃度を550ppmに安定化することを提案している.この場合,2050年における世界のCO2 排出量は2000年比で35%増前後となる.この場合,先進国・途上国ともに,削減量負担が現実的な数値にでき得ると提案している.
ただし,地球温暖化が温室効果ガスに起因して進行しているというモデルが正しいと仮定して,このCO2 濃度レベルでは,地球の平均気温は3℃台の上昇を伴うと言われる.するとやはり,異常気象や海面上昇など,気候への影響は不可避であることになる.
それにしても,昨年の洞爺湖サミットがずいぶん昔のことに感じられる。当時の首相は福田康夫,でも今の総理は鳩山由紀夫で,両者の間にもう一人,麻生太郎がいるというわけだ。国の宰相がこうも短期間に代わるとは,まったく驚異の先進国ではある。
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IPCC 4thアセスメント・レポート
Posted on Friday, Sep 25, 2009 12:07
IPCCによる4th Assessment Report(2007.2)によると,
1995年から2006年の間の12年間のうち,11年が1850年以来の平均気温上位12年中の11件を占める結果となっている.平均気温の上昇は全地球に拡がっており,特に北半球で顕著となっている.また,気温だけでなく海水温も上昇しているという.
同時に,海水面も平均気温の上昇とともに継続的に上昇しており,1961年以来の平均で1.8mm/年,1993年以降では3.1mm/年の割合で上昇している.これは気温・水温の上昇と,氷河や氷冠の融解,北極海の海氷の減少によるものと考えられている.ただし,1993年以降の上昇速度増大が短期的な(といっても10年オーダー)変動によるものなのか,あるいは長期的な傾向であるかについては不明である(ちなみに,北極海の海氷が融けても,もともと海面上にあったものなので,この部分は海面上昇への寄与度は大きくはないはず).また,大雨や高潮の頻度は世界レベルで増大しており,地域レベルでの気候特性にも過去とは異なる傾向が生起していると述べている.
温室効果ガス(GHG),エアロゾル,陸地,太陽の放射などが地球のエネルギーバランスを左右している.このうち人間活動に起因するGHGは産業革命以降増大を続けており,とくに1970年以降における増加が顕著である.なかでもCO2は,地球温暖化現象において最も重要なガスであり,1970年以降の増加量は,産業革命以降のそれの実に80%を占めるという.
この結果,2005年における大気中のCO2濃度およびCH4濃度はそれぞれ379ppm,1774ppbで,過去65万年の間の記録をはるかに上回っている.そして20世紀の中期以降から顕在化した平均気温の上昇は,これらGHG濃度の増大と同期していることを指摘する.一方,過去50年間における太陽放射と火山活動は気温の下降をもたらすと考えられており,IPCCは,人間活動によるGHG濃度の上昇が地球温暖化をもたらした可能性が非常に高いと述べている.
そして, 京都議定書や洞爺湖サミットなど,国際的な取り組みにもかかわらず,GHG濃度はあと30年間程度は増大しつづけるであろうと述べている.IPCCスペシャル・レポート(2000)のシナリオでは,化石燃料が人類の産業活動の主体のままである場合,2000年から2030年の間に,GHG排出量はCO2換算25%から90%も増加すると予想している.このままGHGを現在の,あるいはそれ以上の比率で排出し続けると,20世紀に経験した以上の地球温暖化の進行を引き起こすことになる.
今後,地球の平均気温がどう変化するかは,GHG排出量がどう変わっていくかによって大きく異なる.IPCCではいくつかのCO2排出シナリオについて,今後のCO2濃度および平均気温変化の予測結果を公表している.それによると,2100年でCO2濃度を700ppmに制限するシナリオの場合で,同年までに2.4℃の上昇となる.海水面の変動の予測はかなり難しいため,当該レポートでは,今後の傾向・予測を述べるには至らず,シミュレーション結果を提示するにとどまっている.ちなみに上記シナリオの場合で0.20m-0.45mの上昇と推測している.
さて,このような地球温暖化を緩和・阻止するためには,GHG濃度をできるだけ低いレベルで安定化させることが必要である.そしてそのためには,GHG排出量をいずれかのレベルで減少に転換させなければならない.この転換点となるピークレベルが低いほど,またその時期が早いほど,GHG濃度の安定化レベルを低くすることができる.IPCCによる安定化シナリオのうち,カテゴリーⅡと呼ばれるものの場合,CO2平衡濃度が400-440ppm,排出ピークは2000-2020年,2050年排出量は2000年比で-60%~-30%,産業革命後の気温上昇量2.4-2.6℃,海面上昇量0.5~1.7m(熱膨張のみ)となっている.
鳩山演説 in 国連気候変動首脳会合
Posted on Thursday, Sep 24, 2009 15:18
9月22日の国連気候変動首脳会合において,就任間もない鳩山首相は,我が国における温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減することを表明した。これに対し,参加した各国首脳から高い評価の声が上がったという。国内産業界から次々と表明されている経済・産業活力への影響を懸念するコメントに目もくれず(のように見える),力強くわが国の目指す道を提示したのだなぁ・・・と思いながらこの報道を耳にした。また,この目標の実現のための方策に関しては,「あらゆる政策を総動員して実現を目指す」とし,国内排出量取引制度や再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入,温室効果ガス対策税(環境税)を検討する考えを示した。
欧州では1990年にフィンランドにおいて世界で最初の炭素税が導入され,その後1992年までの間にオランダ,スウェーデン,ノルウェー,デンマークの順に導入されていった。さらに1999年にドイツとイタリア,2001年イギリス,2006年にスイスにて導入されてきた。
一方フランスでは,産業界などの反発が強く導入が遅れていたが,フランス政府は,8月時点で炭素税の2010年からの導入する法案を議会に提出する意向を示していた。そして9月10日,大統領声明において,温室効果ガスの排出に課税する「炭素税」を来年から導入する意向を示した。CO2排出量1トン当たり17ユーロを課税する予定(8月時点では32ユーロだった)という。次々と先進国がGHG排出削減政策を実施し始めており,なにやらあわただしくなってきた。
欧州における海洋エネルギー開発動向を探っているところであるが,そのインセンティブとしてこの炭素税,および固定価格買い取り制度が大きな役割を果たしていると感じる。ただし,国それぞれの事情や環境があり,炭素税が必ずしもGHG削減だけを目的としているのではなく(GHG削減のための財源だけではなく),一般財源対策としての役割も小さくないようではある。
光易先生の“海の波を見る“;岩波科学ライブラリーから
Posted on Friday, Sep 18, 2009 12:03
書評などと掲げるのはなんともおこがましいが,本の紹介なら許されるであろう。出張先の書店でふと目に入った小さな本,“海の波を見る”とある。著者を見てびっくり,あのブレットシュナイダー(Bretschneider)・光易型周波数スペクトルや,光易型方向分布関数の,あの“光易 恒”先生である。おお,小職は本と論文でしか知らないが,学生時代から頭にインプットされ,決して忘れることのないご尊名である。早速購入したのが今年の春。
本書は,氏の長い研究生活のなかで同僚の方々とともに撮りためてきた波の写真をモチーフに,波の誕生から消滅までの一連のプロセスを平易に解説しながら,海の波がみせる様々な表情や珍しい現象を紹介するとともに,波の研究生活におけるエピソードなどをちりばめたものである。概要はざっと次のようなものとなっている。
- 風が吹き出して水面に生まれるさざ波(誕生)
- 風をうけて発達する青年期の波
- 青年期を経てかなり大きくなった後もさらに発達する壮年期の波
- 外洋でかなりの程度まで発達し,種々のダイナミックな様相をみせる成熟した浪
- 風の減退した海域にはいって衰退する波
- 沿岸に到達,砕波して消滅する波
- 不思議な波,美しい波などの風景
- 波の観測や研究のエピソード
海の波は自分の仕事の大事な対象のひとつでもあるのだが,実際この仕事を選んだのは,海の波ならずいぶん長い時間見続けても見あきない,,,そもそも波を見るのが好きだったからでもある。以前,欧州の本屋で見つけた写真集で,とても欲しかったのだが値段が高いのと大きすぎて荷物になるので,あきらめたものがある。灯台に大波がぶつかるところばかりを集めたものであった。また欧州に行くと,大波の海を行く帆船の油絵をよく見る。あれもひとつ欲しいと思っている。そういう小職には丁度よい本である。本書の写真の中には,最近研究が進んできたフリーク・ウェーブかと思われる珍しいものもある。が,肩ひじ張らず,波好きが気軽に本を取って,パラパラめくりながら波の写真を眺める,というような本,,,,,かな。
丁度100ページ程度で,見開きの左ページに写真,右ページに文章という構成になっている。初版は2007年4月で,購入したのは第2版であった。\1,500也。
岩波科学ライブラリー 130,ISBN978-4-00-007470-4C0340
設計規格国際化の背景
Posted on Thursday, Sep 17, 2009 15:04
構造物の設計に性能設計の考え方が導入され,国内基準の改定が進められている.その背景には,構造物の設計の合理化,コスト縮減,アカウンタビィテイの向上などに加え,国際的な技術規格統一の動きへの対応と,我が国の技術分野の国際的な地位向上をはかる狙いがある.
◆国際共通規格策定の背景
技術基準の国際化のこれまでの流れを簡単に整理してみる.まずはブレトン・ウッズ協定にまでさかのぼることになる.この協定は,
1929年に始まる世界大恐慌に際し,各国がブロック経済圏をつくるという保護貿易主義の台等が第二次世界大戦の一因となったという反省と,疲弊・混乱した世界経済を安定化させ,円滑な国際貿易を実現するために,1944年,アメリカのブレトン・ウッズで締結されたもの.
である.この協定において,国際通貨基金(IMF)および国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定され,1945年に発効した.さらに,このブレトン・ウッズ体制の枠組みとして,自由貿易の促進を目的とした,"関税および貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade;GATT)"が1948年に発足した.GATTは,加盟国が相互に同等の条件で貿易取引を行う無差別原則,輸入制限の撤廃,関税の軽減を目的とするものであった.加盟国による交渉(ラウンド)は計8回開催された.
この間に世界はEU統合,APECやASEANなどアジア・太平洋地域における国際経済協力など,多角的な経済圏を志向する情勢が進展し,GATTの枠組みでは不十分となってきた.同時に,GATT当初からの対象であった鉱工業製品に関する技術規格・基準の統合が進展し,ユーロコード,ISOコードが次々と整備されてきた.また,ITをはじめとして,人・物・金融等さまざまな経済活動においてグローバル化が進展してきたため,GATTに代わる新たな枠組みが必要になってきた.
このようななか,1994年,第8回目にあたるウルグアイ・ラウンドでは,GATTに代わる強固な基盤をもつ国際貿易機関を設立することが議論され,1995年1月よりガットは世界貿易機関(WTO)に発展的に解消することになった. こうしてWTOは国際機関として,物品貿易だけでなく金融,情報通信,知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場となった.
WTO加盟国が受諾しなければならない附属書のなかにTBT協定がある.これは加盟国全てに対して,規格類を国際規格に整合化することで,不必要な貿易障害を取り除くことをもとめている.そこでは,技術基準に関する強制・任意規格は国際規格に準拠すること,およびその適合性評価手順はISO/IECガイドに準拠することが定められた.その適用範囲は、「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」が適用されるものを除き,工業製品及び農産品を含む全ての産品について適用され,製品に対する仕様類の要件,生産及び活動に対するマネジメントシステム,それらを用いるための技術仕様等を規格対象としている.
TBT協定によって,各国の国内規格作成過程の透明性,国内規格の国際的な整合性が図られることとなり,国際標準化機関によって制定された国際規格の普及,導入,整合が急務となったわけである.
◆ユーロコード
欧州において加盟各国は,EU域内の内部市場に対し,国内市場を合併させ,境界の無い統一市場を形成することに合意している.この実現のための行動の一環として,各種の技術基準“ユーロコード“策定が進められていた(これは現在も続いている).そしてついに2001年10月,EN1990ユーロコード『構造設計の基本』が発行された.このEN1990は,あとに続くEN 1991 から EN 1999までの9つのコードと一緒になって,EU加盟国共通に,建築物,土木構造物,サイロ,タンクなどの設計において考慮しなければならない安全性,供用性,耐久性に関する総合的な方針と指針を示す,初めての設計基準であった.その適用範囲は施工,コンクリートや鋼などの材料,地盤,耐震,耐火などの問題などにも及ぶ包括的なものとなっている.ウィーン協定を背景に,このユーロコードは,ISO2394(構造物の信頼性に関する一般原則)規格案の検討作業においても,積極的に取り上げられるべく議論が進められていた.
◆我が国の設計規格の改訂
このような状況のなか,建設活動の国際化・ボーダーレス化が進展するとともに,WTO/TBT協定のもと,各種の資材・製品規格の場においても,国際標準化への取組みが進展していた.同時にISOおよびCENを中心に,技術規格の国際標準化が活発化してきていた.わが国においても,欧州を中心に進行している技術規格の国際標準化活動に対応し,国内規格と国際規格の間の整合性を確保するとともに,耐波設計分野や耐震設計分野など,国際的にも有効かつ先進のわが国の技術を積極的に導入させることが緊急の課題となった.
わが国の構造設計の分野においては,土木構造物と建築構造物,また鋼構造・コンクリート構造などのように,構造物の性質・種別ごとに技術標準類を定めてきた.しかしISOおよびユーロコードにおいては,構造物として統一的に規格が制定されており,また材料の技術規格も日本の体系とは異なっている.そこで当時の建設省が中心となり,土木・建築分野の設計に関する基本的な考え方を示すものとして,平成14年3月,国土交通省によって「土木・建築にかかる設計の基本」が策定されたのである.
ふう~,汗;;;
◆国際共通規格策定の背景
技術基準の国際化のこれまでの流れを簡単に整理してみる.まずはブレトン・ウッズ協定にまでさかのぼることになる.この協定は,
1929年に始まる世界大恐慌に際し,各国がブロック経済圏をつくるという保護貿易主義の台等が第二次世界大戦の一因となったという反省と,疲弊・混乱した世界経済を安定化させ,円滑な国際貿易を実現するために,1944年,アメリカのブレトン・ウッズで締結されたもの.
である.この協定において,国際通貨基金(IMF)および国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定され,1945年に発効した.さらに,このブレトン・ウッズ体制の枠組みとして,自由貿易の促進を目的とした,"関税および貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade;GATT)"が1948年に発足した.GATTは,加盟国が相互に同等の条件で貿易取引を行う無差別原則,輸入制限の撤廃,関税の軽減を目的とするものであった.加盟国による交渉(ラウンド)は計8回開催された.
この間に世界はEU統合,APECやASEANなどアジア・太平洋地域における国際経済協力など,多角的な経済圏を志向する情勢が進展し,GATTの枠組みでは不十分となってきた.同時に,GATT当初からの対象であった鉱工業製品に関する技術規格・基準の統合が進展し,ユーロコード,ISOコードが次々と整備されてきた.また,ITをはじめとして,人・物・金融等さまざまな経済活動においてグローバル化が進展してきたため,GATTに代わる新たな枠組みが必要になってきた.
このようななか,1994年,第8回目にあたるウルグアイ・ラウンドでは,GATTに代わる強固な基盤をもつ国際貿易機関を設立することが議論され,1995年1月よりガットは世界貿易機関(WTO)に発展的に解消することになった. こうしてWTOは国際機関として,物品貿易だけでなく金融,情報通信,知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場となった.
WTO加盟国が受諾しなければならない附属書のなかにTBT協定がある.これは加盟国全てに対して,規格類を国際規格に整合化することで,不必要な貿易障害を取り除くことをもとめている.そこでは,技術基準に関する強制・任意規格は国際規格に準拠すること,およびその適合性評価手順はISO/IECガイドに準拠することが定められた.その適用範囲は、「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」が適用されるものを除き,工業製品及び農産品を含む全ての産品について適用され,製品に対する仕様類の要件,生産及び活動に対するマネジメントシステム,それらを用いるための技術仕様等を規格対象としている.
TBT協定によって,各国の国内規格作成過程の透明性,国内規格の国際的な整合性が図られることとなり,国際標準化機関によって制定された国際規格の普及,導入,整合が急務となったわけである.
◆ウィーン協定
TBT 協定によって国際規格への適合性評価手順の標準となったISOは,1991 年にCEN との間でウィーン協定を結び,欧州標準化委員会CEN で先行的に規格策定作業が行われる規格について,ISOはCEN での作業結果をISO の規格原案として採用することが可能となった.おりしもCENでは,構造物の設計に関する規格の検討が進められており,ついに2001年に,信頼性設計法を基本とする性能規定型の設計規格であるEN1990ユーロコード『構造設計の基本』が発行された.こうしてISOにおける構造設計に関する規格においても,CENをベースとする性能規定型の設計法が導入されることが不可避となったのである.
◆ユーロコード
欧州において加盟各国は,EU域内の内部市場に対し,国内市場を合併させ,境界の無い統一市場を形成することに合意している.この実現のための行動の一環として,各種の技術基準“ユーロコード“策定が進められていた(これは現在も続いている).そしてついに2001年10月,EN1990ユーロコード『構造設計の基本』が発行された.このEN1990は,あとに続くEN 1991 から EN 1999までの9つのコードと一緒になって,EU加盟国共通に,建築物,土木構造物,サイロ,タンクなどの設計において考慮しなければならない安全性,供用性,耐久性に関する総合的な方針と指針を示す,初めての設計基準であった.その適用範囲は施工,コンクリートや鋼などの材料,地盤,耐震,耐火などの問題などにも及ぶ包括的なものとなっている.ウィーン協定を背景に,このユーロコードは,ISO2394(構造物の信頼性に関する一般原則)規格案の検討作業においても,積極的に取り上げられるべく議論が進められていた.
◆我が国の設計規格の改訂
このような状況のなか,建設活動の国際化・ボーダーレス化が進展するとともに,WTO/TBT協定のもと,各種の資材・製品規格の場においても,国際標準化への取組みが進展していた.同時にISOおよびCENを中心に,技術規格の国際標準化が活発化してきていた.わが国においても,欧州を中心に進行している技術規格の国際標準化活動に対応し,国内規格と国際規格の間の整合性を確保するとともに,耐波設計分野や耐震設計分野など,国際的にも有効かつ先進のわが国の技術を積極的に導入させることが緊急の課題となった.
わが国の構造設計の分野においては,土木構造物と建築構造物,また鋼構造・コンクリート構造などのように,構造物の性質・種別ごとに技術標準類を定めてきた.しかしISOおよびユーロコードにおいては,構造物として統一的に規格が制定されており,また材料の技術規格も日本の体系とは異なっている.そこで当時の建設省が中心となり,土木・建築分野の設計に関する基本的な考え方を示すものとして,平成14年3月,国土交通省によって「土木・建築にかかる設計の基本」が策定されたのである.
ふう~,汗;;;