Posted on Thursday, Feb 27, 2025 19:08
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Posted on Wednesday, Feb 02, 2011 18:51
昨年末から準備を初め,どうにか形になってきたので,このBlogにリンクを入れた,”Eyes On the North” .
地球規模での気候変動は,広域的な温暖化への道を登り始めているという見解が,どうやら間違いないようである.もとより温暖化肯定派であったのだが,,,昨年初冬に,北極海に関する委員会の委員としてロシア・ノルウェーに出張した際,ご一緒した科学者の方や,向こうで合った研究者らの話を聴いて,その意を強くした.
北極海やオホーツク海では,温暖化の影響が海氷勢力の減退として顕著に表出する. 最近のこれら地域における海氷勢力の継続的な減退は, この気候の温暖化が,北極振動や長期的で周期的な気候変動の影響で,温室効果ガスによる温暖化ではないという見解に腰掛ける余裕のないことを感じさせる .地球環境および社会・産業の保全にとりかかっているうちに,もし温暖化の見立てが間違いであったことが判明しても,『あぁ,ああいうふうにならなくて良かった.』と胸をなでおろすことができるのであるから,良いではないか.
一方で,この気候変化は,これまで手の届かなかった極地域およびそこの資源活用への道を意識させるようになってきた. エネルギー資源を筆頭に,各種天然資源に対する需要は増大しており,北極圏に埋蔵する種々の資源への関心は高まっている.また,現存する基幹航路のセキュリティ悪化に対する代替航路としての北極海航路にも注目が集まるようになってきた.
このような中で,これまで 寒冷海域における工学研究・開発・環境問題にかかわってきた成果・知識・情報を整理・統合して,この領域に関す るナレッジベースを提供する場をつくるとともに,日本におけるプレゼンスを示そう,と,大それたことを志し,友人Kを引き入れて,準備を始めた.”話だけで立ち消えになっては情けない”と,自分に足かせをはめるため,webを立ち上げて この活動を 衆目にさらそう,そうして少しは誰かのためにならなくては・・・
そんな経緯で始めたサイトがこれ,Eyes On the North(http://eon.yu-nagi.com/ である.さあ,どこまでできるか,今年のチャレンジである.
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Posted on Wednesday, Feb 02, 2011 16:45
チョークポイントとは,地政学上で戦略的に重要となる場所で,目的達成のために兵力等がどうしても通過しなければならず,その通行路が狭い等の環境にあって,わずかの兵力や妨害によって容易に阻止されやすい状況にあるところのことをいう.具体的には,重要な輸送路や交通路上の渓谷,橋梁,海峡などがこれにあたる.
近年では国際海上輸送路において,とくに原油輸送の安全保障における重要な課題として認識されている.たとえばペルシャ湾岸諸国で生産される原油の主要な搬出ルートであり,世界中で輸送される原油の約2割が通過するホルムズ海峡は,イラン・イラク戦争,湾岸戦争,イラク戦争など,度重なるペルシャ湾での衝突によって,その都度大きな危険にさらされながら,ときには封鎖されたり,タンカーへの攻撃を受けたりしながら,今日に至っている.2010年にはMOL(商船三井)の原油タンカーが攻撃を受けるなど,現在も情勢が安定しているとは言い難い.我が国をはじめとするアジアの工業国にとって,中東からの石油供給は産業・経済の生命線であり,そのすべてが通過するホルムズ海峡は特に重要なチョークポイントになっている.
様にスエズ運河は,中東原油の欧州・北米への輸送,アジア・欧州間の海上貨物輸送の要衝であり,世界の海上物流の約8%がここを通過している.このスエズ運河は,エジプトに対して英・仏,およびイスラエルとの間における軍事対決の場となり,第3次中東戦争(6日間戦争)時には,戦後6年間にわたり閉鎖された.現在勃発しているエジプトでの政情不安においても,スエズ運河通航における安全リスクへの懸念が再燃しているところである.
上記2箇所は,政情の不安定,軍事衝突によるリスクにさらされたチョークポイントであるが,近年大きな問題となってきているのが海賊襲撃によるリスクである.アジア・中東地域と欧州をつなぐスエズ運河航路は,紅海の出口にあたるアデン湾,およびアデン湾からインド洋に出たソマリア沖海域において,海賊の襲撃が頻発し,大きな脅威となっている.2009年,アデン湾・ソマリア沖での海賊事件は世界全体の海賊事件の50% (217件)を占め,日本関係船舶でも1件の事故が発生している.
さらに,スエズ運河航路では,日本・中国・韓国などの東アジア地域工業国へ向かう途上に,マラッカ・シンガポール海峡を通航する.この海峡は狭隘で浅瀬も多く,航行上の難所となっている.海上事故のリスクに加え,ひとたび事故が発生すると,海峡の航行に支障が生じる恐れがある.また近隣海域では,海賊による襲撃も頻発している.このように,アジア~欧州間のスエズ運河航路では,3箇所の大きなチョークポイントが存在している.
Posted on Monday, Sep 27, 2010 11:02
ちょっと大きな話であるが・・・
四方を海に囲まれた我が国、国土面積は約38万km2 世界60位であるが、排他的経済水域EEZは約447万km2 、世界6位を誇る。漁獲漁業生産量は世界5位(2008年、SOFIA)、輸出入貨物の99%以上(重量換算)は海上輸送に依っている。海洋が、わが国の国民生活、社会および経済発展を支えてきたと言っても過言ではないだろう。内閣府が行った調査によると、海洋産業は素付加価値額7.4兆円(対GDP1.48%)、従業員数101.5万人の産業規模を占めているという。いま、この広い排他的経済水域の価値を再評価し、積極的に海洋の開発を推進することによって、産業・経済・社会の発展につなげようとする機運が高まっている。
さて、海洋開発とはどのような行為のことであろうか?とにかく海岸から離れた沖合で、石油掘削など、海、海底を直接利用する行為だろうとはすぐに思いつくであろう。しかし今日において、海洋開発に注力しようという背景には、もっと重要なことがある。
いま、グローバル化の波が社会のいたるところに拡大し、新興国の経済・産業の発展と合わせて、ここ30年の間に世界の経済・産業の構図は大きく変わってきた。昔の地球儀・地図帳は歴史の証拠ともいうべき地位にかわり、地理・地図帳業界はきっと忙しいことだろう(ちなみに近年お気に入りの地図帳は、フランスで製作されたという“・・・”である。 )。目まぐるしい経済発展と並行して、天然資源の有限性が顕在化し、資源戦争とも言うべき国際競争を背景に、エネルギー安全保障の重要性が増大している。さらには、人間活動がいよいよ地球規模の環境に影響を及ぼしていることが認識され、いかにこれに立ち向かうかが大きな課題になってきた。こうして、経済発展、資源の有限性、地球環境問題という、相互に複雑に連関する3つの社会的課題、いわゆるトリレンマをいかにして克服するかが、世界で主要・共通の課題となるに至った。
さて、人類は基本的には陸上に居住し、陸上で様々な活動・開発を進めてきた。この間、海洋は世界をつなぐ輸送路となってきた。さらには、海洋のもつ様々なポテンシャルが知られるようになり、徐々に海洋の資源開発に乗り出して今日に至っている。そして、ついに陸域の資源に限界が見え始めたことが契機となり、海洋資源の開発に大きな注目が集まるようになってきた。広大な海洋空間には多くの未利用資源が期待され、同時にその開発には新たな技術の開発・進展が求められることから、新しい産業フィールドの勃興も期待されている。宇宙に並ぶ、久しぶりの大きなフロンティア領域の出現である。
同時に、海洋は地球環境を制御する重要な構成要素である。その開発は、地球環境に大きな影響を与えかねないため、細心の注意が求められる。また、海洋の資源は化石燃料や鉱物だけではない。波浪、潮流・海流、温度・密度などを媒体としたエネルギー源として、および広大な洋上空間での風力エネルギー源として、すなわち再生可能エネルギー源として大きな可能性を秘めている。再生可能エネルギーの開発によって、温室効果ガスの排出量を削減しつつエネルギー需要に応えることが期待されているのは周知のとおりである。
海洋の開発は、トリレンマを克服し、地球規模での持続的発展をはかるためのキーポイントとなりうるであろう。ここに海洋開発の意義が存在するといえる。
Posted on Thursday, Aug 26, 2010 10:51
最近担当した業務のなかで、SWOT分析を扱う機会があった。今日、サーチエンジンでSWOTを検索すると、日本語サイトだけで179万件以上のサイトがヒットする。英語を含めると3千万件を超える。これほど巷に広がっているとは、少々驚いた。たしかにインドネシアでも、SWOT分析を使って事業計画の分析をおこなっている資料に複数出会った。この手法は、特性を把握して用法を間違わなければ、有力な戦略分析・評価ツールとなり得るものと理解している。
■SWOT分析とは
SWOT分析は、組織、事業、プロジェクトなどのビジョンや戦略を立案するために、内部環境および外部環境を構造的に分析するもので、米国スタンフォード大のAlbert Humphreyによって1960~70年代に構築された分析手法であ る(
SWOT analysis, From Wikipedia, http://en.wikipedia.org/wiki/SWOT_analysis, viewed at Aug.25, 2010 ) 。この手法はハーバード・ビジネス・スクールのテキストともなり、企業活動を分析し戦略を策定する方法として米国で広く普及した。今日では企業活動のみならず、行政・公共事業分野など、広い分野で活用される様になっている。
前置きが長くなったが、SWOT分析とは、組織の外的環境に潜む機会(O=opportunities)と脅威(T=threats)、組織の内的状況が持つ強み(S=strengths)と弱み(W=weaknesses)について分析することにより、組織やプロジェクトなどの有する目標が達成可能かどうかを判断する手法である。S・W・O・Tの4要素の分析の結果を次図のようなマトリクスにすることで、問題点やその構造がわかりやすく整理される。これをもとに、組織やプロジェクトの戦略・目標の評価・策定を進めようとするものとなっている。ただし、後でも述べるが、SWOT分析が基本戦略を導き出す1次的なツールと解釈するのには問題がある。むしろ、上位の目標あるいは基本戦略があって、これを評価し、目標・戦略にフィードバックするプロセスをあたえるもの、ととらえた方が間違いなさそうである。
表-1:SWOT分析結果の整理例
内部状況
外部環境
好影響
S trengths 強み
組織の強みとなる要素を記述
O pportunities 機会
外部環境で、テーマにおいて機会・チャンスとなる要素を記述
悪影響
W eakness 弱み
組織の弱みや課題・問題となる要素を記述
T hreats 脅威
外部環境で、脅威となる要素を記述
■SWOT分析の方法
企業や組織における戦略とは、組織の内的状況と外的環境をすりあわせるもの、ととらえる考え方が広く受け入れられている。これがSWOTの基礎となっている。ここでOとTで表される外的環境とは、企業や組織が目的を達成するうえで影響を及ぼすと思われる要因、たとえば政策や規制、経済状況、技術革新、顧客、ビジネスチャンス、競合他社、都合の悪いことなど、とされている。またS・Wで表される内部状況には、目的達成にかかわると思われる組織の強みと弱み、たとえば保有する人的資源、資金、技術、情報、装備・設備・資源などの状態と課題・展望などとされている。繰り返しになるが、これら外的環境と内的状況の状態と動向を分析・予測し、目標を実現するための戦略を定めることに結び付けようする手法がSWOT分析である。
実際のSWOT分析では、まず、設定されたテーマのもとでSWOTそれぞれの要素を抽出する。この際、いきなり“脅威は?“と検討するよりは、関連しそうなテーマ・分野・分類を(政策、経済、資金、競合他社、競合製品、災害、事故・・・など)、その階層にも注意して準備しておいてとりかかるのが良いだろう。SWOT分析を戦略的に実施する上で、3C(Customer, Competitor, Company)というフレームワークと組み合わせ、顧客・競合他社・自社に関連する要素に注力して分析する方法も提案されている。
多数の項目要素が抽出された際、それが内的状況なのか外部環境なのか、考え方や状況によってどちらにも取れるような事項が出てくる。内的状況は、自分の組織内で対処可能なもの、外的環境は組織内では変えることができないもの、とすると良いと説明されることが多いようである。また、SWOTの制限をつけずに要素を抽出し、KJ法などで整理する方法も考えられる。こうして、抽出された要素を既出のマトリクス形式に整理する。
↓ 以下につづく↓
Posted on Thursday, Jul 29, 2010 14:57
7月の初め,海洋政策研究財団の主催で,「魚のいない海~次世代に海を引き継ぐために~」というシンポジウムが開催された.講師は仏外務省開発研究局(所長)兼地中海および熱帯地域の漁業研究センター(所長)のフィリップ・キュリー氏ほかである.たしか,今年の春に企画されたのであるが,諸事情で夏に延期されたものである.残念ながら参加することはできなかった.同氏のことを知ったのは,昨年日本でも刊行された『魚のいない海 (UNE MER SANS POISSONS),フィリップ・キュリー/イヴ・ミズレー;勝川俊雄監訳,林昌宏訳』の著者としてである.
■世界の漁業生産
FAOによる最新の統計情報(SOFIA2008)によると,世界の漁業生産量は2006年において1億4360万トン(漁獲漁業9200万トン,養殖漁業5170万トン)に達した.これは過去最高値である.ただしこれは養殖漁業生産の増加によるもので,養殖漁業生産は,食用魚類の47%を占めるに至っている.また漁獲漁業での生産量は1990年代以降は概ね頭打ちになっている.一方漁獲漁業を支える天然魚種の資源は,FAOがモニターしている水産魚種の約52%は最大持続生産(maximum sustainable limits)の限界かその近くの状態にあり,19%が過剰漁獲,8%は枯渇状態,1%が枯渇状態からの回復中にあるという.このように,世界レベルで漁業生産・漁獲漁業資源は危機的な状況にある.
■日本の漁業生産
1980年代当時の日本の漁業生産は世界1位を誇っていた.その内訳をみると,1970年代はスケトウダラ,1980年代はマイワシの大豊漁に支えられたものであった.このうちスケトウダラの漁獲は,200海里体制による外国水域からの撤退,ベーリング公海の規制,国内漁場での資源減少などにより,現在では盛期の15分の1以下まで低下した.一方,これと同じ時期にマイワシが急激に漁獲を拡大し,1980年代の我が国の年間漁獲量を支えた.突然登場したマイワシが1990年代に入って急激に減少すると,1970年代から続いていたマイワシ以外の魚種の漁獲減少が顕在化し,漁業生産は90年代以降に激減,現在はピーク時の40%を下回り,終戦後である 1950年代の水準となっている.
本書に登場するダニエル・ポーリー氏らは,1980年から2000年にかけて,日本の周辺海域から魚が激減したことを明らかにし,その概要は日本の新聞でも紹介された.水産総合研究センターの報告でも,日本の主要な漁業資源の状態は,約半数が低位にあるとのことである.
■魚のいない海
本書は科学者であるフィリップ・キュリーと科学ジャーナリストのイヴ・ミズレーによって執筆され,2008年に刊行された.本書は,人類が初めて海洋生物資源を利用しはじめたところから,現在の危機的状況にいたるまでの歴史を縦軸として,海洋生態系がこれまでの間に,漁業を介してどのような影響を受けてきたかについて,多くの新しい分析・研究成果をもとに提示する.本書を通じて,世界が今日の過剰漁獲・漁業に行きついた過程と,世界の海洋生物資源がどうなっているのか,を知ることができる.いかに多くの種が,漁業によって絶滅や枯渇に向かってきたかが,たたみかけるように,しかし科学的かつ平易に論じられていく.また,これまでに投じられてきた漁業管理・資源管理策とその効果や問題点についても言及される.こうして本書は,過剰漁業が海洋生態系にもたらす様々な影響は,地球温暖化よりも直接的な懸念事項であることを示し,我々に,地球における人類の地位や役割について自問することを即す.
これだけであれば,本書は自然保護主義者グループの戦略的な図書のようにとられかねないが,主著者はれっきとしたフランス政府外務省に所属する科学者である.著者の視点には,人類が海洋生物資源を枯渇するまで漁業を続けるのか,あるいはこれを保全する方法を見出すのか,という命題が見え隠れしながら考察が進められる.そして最後のところでは,『健全な夢物語』と『おわりに-海のゆくえ』において,漁業が立ち向かわなければならない課題を我々の前に提示している.そして著者は:
人類はこれまで,自然をある程度誘導・構造化してきたが,それを超越することは不可能である.今日では,自然の限界が明らかになってきたが,これは人類の限界でもある.これからは,人類が責任感をもって自然を利用する,新しい漁業を創造することが求められている.
と結論する.
■日本の漁業の改革
本書を淡々と読み進めると,漁業がいかに海洋環境を破壊してきたか,漁業こそ自然破壊の急先鋒であるという一方的な解釈に利用されかねない.かなり危険な本ともとれる.しかし,科学者である著者の視点は,上述したとおりである.
なお本書の最後に,監訳者である勝川氏による『付録,日本の漁業』という20ページ程の解説がある.ここでは,日本の漁業と資源管理の歩み,およびその問題点を概説するとともに,日本の漁業の改革について論じられている.ここも必読である.いやむしろ,最初にここを読んでから本文を読むのも良いだろう.