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海洋開発でトリレンマの克服を

 ちょっと大きな話であるが・・・

四方を海に囲まれた我が国、国土面積は約38万km2世界60位であるが、排他的経済水域EEZは約447万km2、世界6位を誇る。漁獲漁業生産量は世界5位(2008年、SOFIA)、輸出入貨物の99%以上(重量換算)は海上輸送に依っている。海洋が、わが国の国民生活、社会および経済発展を支えてきたと言っても過言ではないだろう。内閣府が行った調査によると、海洋産業は素付加価値額7.4兆円(対GDP1.48%)、従業員数101.5万人の産業規模を占めているという。いま、この広い排他的経済水域の価値を再評価し、積極的に海洋の開発を推進することによって、産業・経済・社会の発展につなげようとする機運が高まっている。

 さて、海洋開発とはどのような行為のことであろうか?とにかく海岸から離れた沖合で、石油掘削など、海、海底を直接利用する行為だろうとはすぐに思いつくであろう。しかし今日において、海洋開発に注力しようという背景には、もっと重要なことがある。

 いま、グローバル化の波が社会のいたるところに拡大し、新興国の経済・産業の発展と合わせて、ここ30年の間に世界の経済・産業の構図は大きく変わってきた。昔の地球儀・地図帳は歴史の証拠ともいうべき地位にかわり、地理・地図帳業界はきっと忙しいことだろう(ちなみに近年お気に入りの地図帳は、フランスで製作されたという“・・・”である。)。目まぐるしい経済発展と並行して、天然資源の有限性が顕在化し、資源戦争とも言うべき国際競争を背景に、エネルギー安全保障の重要性が増大している。さらには、人間活動がいよいよ地球規模の環境に影響を及ぼしていることが認識され、いかにこれに立ち向かうかが大きな課題になってきた。こうして、経済発展、資源の有限性、地球環境問題という、相互に複雑に連関する3つの社会的課題、いわゆるトリレンマをいかにして克服するかが、世界で主要・共通の課題となるに至った。

 さて、人類は基本的には陸上に居住し、陸上で様々な活動・開発を進めてきた。この間、海洋は世界をつなぐ輸送路となってきた。さらには、海洋のもつ様々なポテンシャルが知られるようになり、徐々に海洋の資源開発に乗り出して今日に至っている。そして、ついに陸域の資源に限界が見え始めたことが契機となり、海洋資源の開発に大きな注目が集まるようになってきた。広大な海洋空間には多くの未利用資源が期待され、同時にその開発には新たな技術の開発・進展が求められることから、新しい産業フィールドの勃興も期待されている。宇宙に並ぶ、久しぶりの大きなフロンティア領域の出現である。

 同時に、海洋は地球環境を制御する重要な構成要素である。その開発は、地球環境に大きな影響を与えかねないため、細心の注意が求められる。また、海洋の資源は化石燃料や鉱物だけではない。波浪、潮流・海流、温度・密度などを媒体としたエネルギー源として、および広大な洋上空間での風力エネルギー源として、すなわち再生可能エネルギー源として大きな可能性を秘めている。再生可能エネルギーの開発によって、温室効果ガスの排出量を削減しつつエネルギー需要に応えることが期待されているのは周知のとおりである。
海洋の開発は、トリレンマを克服し、地球規模での持続的発展をはかるためのキーポイントとなりうるであろう。ここに海洋開発の意義が存在するといえる。
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