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津波対策に舵を切るべき

 3月11日の東北地方太平洋沖地震による東北地方の港湾施設への被害において特徴的なことは,

  • 地震動そのものによる施設の変形や破壊は,地盤の液状化被害を含めてあまり深刻ではない.これは,耐震設計技術の向上と,施設の耐震強度を向上させる対策の進展によるものと考えられる.
    [東北地方の港湾における被災状況について(現地調査速報) :
    http://www.pari.go.jp/information/20110311/p20110323.html]
    なお,浦安など東京湾内の埋め立て地での液状化被害はかなり深刻のようである.

  • 地震動による港湾施設被害が比較的少ないものの,津波による施設への被害は甚大である.
 という2点.また全体的な特徴として,津波による広域的な被害が発生していることが挙げられる.

港湾の施設においては,防波堤,防波護岸,防潮堤等における被害が著しく,また港湾利用者の施設にも甚大な被害が発生した.港湾施設そのものへの被害では,防波堤堤体の移動・転倒・流失,胸壁の移動・転倒・流失,構造物基礎周辺の洗掘,埋め立て地盤の洗掘,洗掘による舗装やエプロンの損害などが広範に発生している.建物では,倉庫や建屋そのものの流失や損壊,窓・ドア・シャッターなどの変形や損壊が発生.荷捌きのために置かれていた貨物などにおいては,スタックしてあったコンテナの倒壊・流出,車両(出荷待ちの製品車両,港湾関係者の車両等),各種バルク貨物などの浸水・流失などが発生.流失した貨物や船舶,損壊した建物などは,津波に乗ってさらに別の建造物に次々と衝突して被害を拡大させていった.

 今回の巨大津波による被害は,港湾・漁港・海岸施設への,いわば線的な空間域にとどまらず,背後の産業地域や市街地に面的に広がった.こうしてみると,今回の地震にあって,津波による被害が極めて大きな比重を占めていることに慄然とさせられる.翻ると,津波の来襲が予想される地域における今後の地震防災では,予算を津波対策に集約することが重要な焦点となる,あるいはするべきであると強く考える次第である.
 
 巨大津波への対策として建設された釜石湾口防波堤および大船渡湾口防波堤は,多くの部分がケーソン堤体ごと水没,その多くは港内側に移動した様子である.津波の押し波に屈してしまったわけである.できることなら押し波には耐えて,湾内の水位の上昇を抑制できれば良かったのだが,それでも津波の勢力を幾分かは押さえることができたらしい.津波の対策としてまず想起される方策は,こうした沖合での防波堤による抑制のほか,沿岸部での防潮堤および水門・ゲートによる浸入の防止といった,津波の浸入を直接防ぐアプローチである.しかし今回のように,想定していた規模を越える津波が来襲すると,背後の地域は甚大な被害に見舞われる.

 せめて人命だけは護るとすれば,安全な高所に迅速に避難するシステムと施設を整備することがもう一つのアプローチである.今回の地震で壊滅的な被害を被った複数の地域を概観すると(津波映像を何時間も見続けるうち・・・),
 
  • リアス式海岸湾奥の狭隘で平坦な低地にある市街地:内陸側にいた住民は早々に背後の丘陵地へ避難できたが,海に近いところにいた住民は,避難に時間を要した.さらには,ビルの3階をこえる津波に対して安全な強度と高さをもつ建物はわずかしかなかった.道路はあまり広くなく,かつ複雑なため,自家用車での避難にも時間を要した.
  • 低く平坦な平野がつづく市街地・集落:住宅地ではせいぜい3階建てが少しある程度で,高く強度のある建物が少ない.海岸にあった堤防を容易に越えた津波によって住宅地が広範囲に浸水した.
  • 河口から遡上してきた津波が河川堤防を越流して市街地に浸入.海からと川から浸入してきた津波に襲われた.避難経路が遠回りになったり,寸断されたりしたであろう.
 
 こうした事情を踏まえると,海岸や港湾・漁港背後の集落や市街地にて居住・活動する市民が,想定される津波到達時間内に移動できる,適切な高所を人為的に整備することを,もっと積極的考えるべきであると考える.たとえば,目標とする時間内に背後の丘陵地に避難できない地域において,オシャレなManmadeの高台をつくり,行政,緊急時対応機関,医療機関,あるいは教育機関などの一部を移設するというのはどうだろう.あたらしい街のランドマークにもなろう.また,その平面形状や立体的な形状を工夫することによって,陸上に侵入してきた津波の挙動を制御・抑制・減勢できる可能性もあると考えている.
 
 今回規模の津波がそう近々に発生するとは思えない.時間はたっぷりあるわけなので,(100年以上のオーダーで),あわてて巨費を投じ,最大限のものをつくる必要はなく,その地域社会の変化など,時間軸を適切に見極めて取り組めばよいはずである.どんな避難高台をつくろうか,,,と日に一度は頭の中で想像している
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