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限界集落化が進んでいる

 12/1に開催されたシンポジウム,”このままでよいのか~漁業地域の再生を考える~(漁港漁場漁村技術研究所)” に参加した.色々示唆に富むシンポであったことは既に記したが,それを振り返りながら考えていくことにする.
 
まずは,大野 晃 長野大学教授による基調講演をもとに整理した.
 
◆概論としての限界集落
 多くの農山漁村を支える基礎的な社会組織が集落であることは言うまでもないだろう.そこに共通する社会的な問題となっているのが,高齢化率および過疎化の進行とともに,限界集落化の進行である.講演では,平成15年における日本の市区町村別将来推計人口をもとにすると,2030年に高齢化率50%を超える限界自治体(集落ではない)が144に達するとの推計が紹介された.
集落が限界集落に転じていく理由やプロセスは,細かく見ていくと多様なものとなるが,大野教授は限界集落化の視点において,量的な規定を用いて集落を4つの類型に整理している.これが,存続集落(55歳未満が半数以上),準限界集落(55歳以上が半数以上),限界集落(65歳以上が半数以上),消滅集落(無人)である.
 
<農山漁村地域の限界集落化および集落の消滅がもたらすもの>
  • 地域が育んできた伝統芸能・伝統文化の喪失
  • 日本人の文化・感性を育んできた山村の原風景の喪失
  • 山の荒廃と放置林化,および流域環境の劣化,防災機能の低下,沿岸海域の環境劣化
<対応策,地域の再生方策は?>
○過疎化,高齢化が進むのと並行して,公共交通サービスの低下,各種社会・生活・公共サービス(医療,買い物,金融,文化,等々)の低下も進行し,人口流出を助長している.その解決法として大野教授は,集落の社会生活におけるライフミニマムを保障することが必須と説く.これを多目的総合施設“山の駅“と命名し,森林環境保全交付金制度および,総合的な施策内容を盛り込んだ関連法を創設すべしと続ける.
 
○流域の共同管理を進める.すなわち,上流域と下流域の協働と理解をはかり,上流の森林の多面的機能に注目し,その保全を通じて流域の環境を良好に保つ施策を進める.たとえば,森林組合,農漁協および流域住民が協力し,上流域の森林の環境寄与率を評価して,森林環境税などの税制を導入し,これを上流域の環境保全,集落環境の維持のために投入する試みが始まっている.
 
○住民の自発的な行動や提言の必要性を指摘.これを背景にした政策提起型の地域づくりを目指す取組みの必要性を説く.実際に効果を出しつつある自立の事例がいくつか紹介された(高知・旧十和村,徳島・上勝町など).しかし,残念なことに,すでに限界集落化した地域にその余力が十分にあるというケースは少ないだろう.したがって,集落がまだ準限界状態にあるうちに,予防的な施策を投入していくことが必須であることが強く指摘された.

○つまりは,いかに若年層を農山漁村のコミュニティに呼び戻すかが焦点ということであろう.そのアプローチは,
  • 農山漁村と都市間の人的・社会的・文化的・事業的な交流機会の促進,農山漁村地域の生活利便性の向上,1次産業就業者の収入向上などを誘引・導入・促進する施策・制度の展開を,
  • 政策・施策面だけでなく,
  • 住民・市民レベルでの自主・能動的な取組みと協働して推進する.
とまあ,書いているうちに自然と教科書的な解になってしまった.これをもっと掘り下げて,現場の状況に踏み込んで実行できるかが,成否の鍵となるのであろう.シンポではこの先の議論として,漁村地域に対象を絞って,議論がもう少し進められた.

<本稿最後に, 漁業集落の理想像を描くべきでは? >
ここまで,ずっとあまり明るくない話題に終始してきたが,我が国にも,いろんなところがうまく関連しあって,聴くだけで”あぁ,行って見たいな”と多くの人が反応するようなところもあるはずである.たとえば
愛媛県双海町などのように.あるいは,先進諸国の田舎にもそんなところがあるはずである.詳しく調べてはいないが,Yukka(友人,職業;ドライバー,outdoorガイド)の住むフィンランドのバルカウス村,UKのコーンウォールの幾つかの漁村など,少なくてももう少し明るい社会生活がそこで営まれている.
どんな漁村像,漁業集落像を描くことができるだろうか,理想像を描いてみることが必要に思う.


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