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漁業集落の危機,限界集落化
Posted on Saturday, Dec 05, 2009 16:25
◆漁業集落の危機
12/1に開催されたシンポジウム,”このままでよいのか~漁業地域の再生を考える~” での講演・パネルディスカッションをまとめ,漁業集落の限界集落化問題について,少し考えを進める.
<漁村・漁業集落の状況>
・・・作成中・・・
<魚価の問題,沿岸漁業者のおかれている状況>
漁業者段階での魚価が非常に安く,また,それが低下する傾向にあって漁業経営を圧迫している.一方,小売価格と漁業者段階の価格差が10倍以上も拡大する事例も珍しくない.つまり,小売価格は相応に高いのに,漁業者段階では非常に安く買い叩かれており,流通段階での中間マージンの比率が価格の大部分を占めている傾向がある.しかし,市場・仲買を通している現在の流通構造では,漁業者は魚価を自分で決めることができない.漁連はこの点で大きな障害となっており,沿岸漁業者が自分の漁獲物を高く販売することを阻害しているという痛烈な指摘が,漁業者の中から出ている.(仲買システムの全てが問題ではないと思うのだが,苦しんでいる漁業者にとって障害となる部分はあると思う.)こうして地域によっては,沿岸漁業は極めて低調な状況に陥りつつある.また,経営が難しいところに後継者を期待するのは困難である.
こうしたなか,漁業者が自分で値段付けして販売する方策として,朝市などに出店して直販する漁業者も出てきているものの,まだその環境(販売の仕組み,場所など)は十分に整っていない.また離島では消費地から離れているため,物流コストや鮮度の点で本土産品に負けてしまい,価格は低調となってしまう.
沿岸域の水産資源についても不安がある.昔のように捕れなくなった,昔よりも魚体が小さくなったといった話を各地で聞くことができる.環境の悪化に加え,環境の変化,および漁獲圧力などがその原因と考えられる.
こうして沿岸漁業を基盤とする地域・集落では,沿岸漁業の活力低下とともに地域社会の活力が縮退しつつあり,若年層の域外流出が高齢化率の増大に拍車をかけているものと考えられる.
<漁業・地域再生への取組み例>
しかし,沿岸漁業の活性化を図ろうとする取組みも行われており,一部では具体的な効果をあげている事例もある.漁家の収入向上への取組み例では,
- 未利用・未出荷の魚種の活用,付加価値をつける商品開発(トレーサビリティや各種品質認証,地域独自の料理の商品化,鮮度保持技術の導入など),などを通じて価格や収入拡大をはかる取組み
- 遊漁の兼業,定置漁業への転換
- 朝市での直販,市場を通さずに高級食材を供給するルート開発
- 生産・流通・消費までを包括したフードシステム全体での取り組み
資源再生への取組みとして,
- 種苗放流や漁獲の管理(網目制限,体長制限など),資源管理に向けた各種調査
- 漁礁による漁場造成と漁業管理,間伐材での簡易漁礁設置と漁業・遊漁での利用など.
システム・行政施策としての取組みでは,
- 都市住民からの財政支援を募って新規参入を助成
- 都市・漁村交流,観光事業,新規事業としてのオーナー制度
などが行われている.
一方,経済的に豊かな漁業地域では,現状以上の工夫や,将来を見据えての都市住民や外部地域との交流,観光などの経営多角化に関して消極的,あるいは関心が低い傾向のあることが指摘されている.人的,経済的にも余裕のあるうちに,漁業集落が健全に継続できるように,社会環境を考慮した手を打つことを考えることが望ましい.
<限界集落化の回避には? 出口はどこにあるか?>
まずは地域社会の基盤である沿岸漁業経営の安定化,状態の向上をはかり,後継者を確保すること,さらには,関連産業の振興を通じて若年層の地域への定着を実現することである.このため,沿岸漁業に関しては,資源再生産の視点を持った資源利用を通じて人も豊かになる漁業,生産者が価格付けできる事業システムの構築,を目指すことが必要である.その取組みにおいては,
- 漁業者が抱える問題・課題を的確に認識し,解決するプログラム・活動を提供すること.
- 生産・流通・消費までを包括したフードシステム全体での取り組みにより,流通や商品価値のフェーズでの課題解決をはかる.
- 漁業者自らが危機意識をもち,自発的に活動すること
などが求められる.一方,高齢化率の上昇を阻止するという社会的な課題への取組みにおいては,
- 若年層が漁村地域の事業に関わる機会を提供すること,および,従前のままではなく若者が入り込める新たな事業・プロジェクトが必要である.
- その方策では,都市漁村交流による直販機会の拡大,観光・エコツーリズム,商品開発,事業機会の拡大,認知・情報発信など.
- 環境事業分野に活路が開ける可能性がある.
- 上記のような活動・事業の展開には,漁業地域の問題に包括的に取り組める人材が必要
- 加えて,集落住民の危機意識と自発的な行動
などが必要である.政策・施策のフィールドでは,
- 地方自治体単位ではなく,地域・集落・共同体を意識した取組みの必要性
- 県レベルでは漁業の振興,市町村レベルでは集落・地域の振興を考え,取り組むことになるであろう.
- 対症療法ではなく予防的施策の展開
が必要である.さらに,アカデミズム・研究者においても,社会科学分野からこの問題への取組みを展開し,問題解決へむけて協働することが強く求められている.すなわち,
- 現場の課題を動機に,学の領域からの客観的な分析・評価・研究を展開し,
- 問題解決に向けた提言を行い,現場と協働して地域の問題解決に取り組む.
ことである.
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