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行政刷新会議 水産基盤整備事業仕分けレポート

以下は,管理人の個人見解です。

◆集中・集約
 漁港の数があまりにも多いと受け取られている傾向があることを背景に,事業の重点化・集約化をどのように図っているかが繰り返し問われた。また,組合の統合が進んでいるのであれば漁港の数が少なくでき,集中的な整備が進められるはず,小規模漁港の統合をもっと考えるべきではないか,という指摘があった。このあたりでは,漁港の数そのものを少なくすることを想定している様に発言している委員と,整備対象の漁港数を削減するという様に的確に内容をとらえている委員の両方がいることが気になった。
 水産庁サイドの説明・答弁は,組合の統合とともに,漁港の統合,機能の集約を進めているところで,整備対象についてもこれに応じて調整されており,この先も続けることが示された,,,が如何せん時間が限られていて,基礎的な知識が十分でない委員に対して,正確に理解してもらえたか,心配である。
 一方こうしたやり取りの中で,財務省が指摘している,1種・2種漁港の平均水揚げ高2.44億円を下回る155か所の漁港の事業は不採択としてはどうかという質問と並行して,小さな漁港を母港とする漁業者が近隣の大きな市場に入れるのであれば,1種・2種漁港や水揚げの小さな漁港を整備対象から単純に除外するのは適正ではない,という重要なコメントもあった。また,漁港種別ごとの水揚げ量や水揚げ高に応じて,整備事業予算の配分割合を考えるべきという示唆もあった。(ここ10年間に投入した予算の内訳1-4種漁港順に,29.5,24.1,24.4,22.0%。水揚げ量は23,24,48,5%)

◆便益評価とそれに基づく重点化
 『事業を効率的に実施する上で,重点的に実施することである。費用対効果はどう考えたのか。便益評価に関して外部チェックが行われているか。』 これに対しては,
 『直接便益のみを計上している。水産業のコスト削減,水産物の価値上昇,総合的に評価,1.2以上を基準にしている。平均は1.6。評価内容については,外部委員による委員会の審査を受けている。』
と回答。
 『地域振興や漁村振興を加味して考えるのであれば,このb/cで重要なことは,1.6以上ということではなく,早く完成させ,早く効果を発現させることではないか。』 これに対しては,『流通拠点,中核拠点という観点での各自治体による判断を通じて,重点整備する漁港を決定している。』という回答。
 
 
◆事業成果の早期発現
 『施設の整備,完成までにどれくらいの時間が必要か。集中的に実施すれば,成果をもっと早く得られるのではないか』,という質問について。水産庁からは,何も無いところから漁港を完成させるには一般に10年くらいかかる。技術的には短縮可能であるが,従来すでにつかっていたところに手を入れる場合など,個別に 事情があり,時間がかかることが示された。
 質問の意図はわかるが,個別に事情があり,ここを作ってから次に行くような手法をとると,漁港ができたところは良いが,後まわしになったところに致命的な立 ち遅れや,地域経済・社会の崩壊を招く危険がある。他方,その問題を主導的に調整し,軋轢や負の効果を受け止めたうえでダイナミックに整備を進めるという姿勢よりは,これまでの施策では,全方位的な対応になりがちであったとも感じる。たしかに予算編成・事業計画においてそれなりに重み付けは行われてきたものの,その姿勢が国民に説明されることはなかったし,その機会も無かったのではあるが。また,こうしたトレードオフの調整には,漁港事業の範疇で可能なことと,もっと広範な事業を巻き込んでいかないとできないことがあり,後者の方の比重が重くなることが予想される。論じていくと深いものがあるのだが,短時間の仕分けの席ではそこまでの議論が展開されることはなく,淡々と過ぎた。

◆衛生管理など事業の概要がわかりにくい
 『高度に衛生管理されている水産物とはどういうことか』,『7割の水産物はまだ衛生管理されていないのか』,『衛生管理の指標はあるのか』,などの質問が提示された。これらについては,それなりに回答された。ここでは,水産物の衛生管理が現在どうなっていて,何が問題で,国際的情勢はどうなっていて,事業が遂行する対応策はどのようなことか,まだまだ国民の認知度が低く,説明が必要であることが表面化したとも言える。
 続 いて,『では高度な衛生管理対策を実現する事業の根本的な目標は,国民に提供する水産物の衛生対策なのか,輸出拡大なのか,そしてその到達目標はどこにあるのか』,という質問が出された。これは重要な質問であり,ここをしっかり踏まえて事業を計画することが必要であろう。この課題は,以降の議論でもたびた び浮上していた。
  
◆水産物の増産について
 『係留施設を拡大しても水揚げ量は減少している。資源状態が主因であれば,漁港整備ではなくて資源対策に予算を重点配分するべき。また,水産物増産量14.5万トンの目標とどうつながるのか,またどれほどの予算が必要なのか』,等の質問が提示された。
 これに対しては,『漁場整備によって増産できることを予想し,漁場整備関連予算の比率を従来よりも高くしている(前年比で全体は-15%であるが,漁場整備 関連は横ばい)。この目標成果が14.5万トンであり,それに向けて予算を組んでいる。14.5万トンの根拠は,過年度の事業成果から推算。』と回答された。 
 
◆耐震化,長寿命化
 『食の安全に比して,インフラ整備に偏重していないか。630億の予算(耐震化,長寿命化,等)は緊急性があるのか,今年度に必要なのか。過去からやってきたものなのか。』という質問。回答では,『時間軸を考えた総合コストで判断。数年前から意識しはじめ,その必要性から事業化をはかった。』等の説明が行われたが,質問者の理解が十分に得られたとは感じなかった。施設のライフサイクルコストやアセットマネジメントによる維持管理の必要性,コスト最適化などについて限られた時間で説明するには限界がある。委員にどれほどの事前資料が配布され,また委員がどのような下調べをしているか不明であるが,少なくても一部の委員にあっては準備不足を感じた。

◆重複?
 初日に審議された対象の中に漁村総合整備事業84億があったのではないか。初日の仕分け結果と重複はないのか。→審議は当該委員会で。

◆総務省の政策評価結果はどうだったか?
行政監察においては,需要予測の方法,直近値を使った評価を指摘された(前年に病気発生のため)
  
◆交付金
交付金はどうなっているか。
              副大臣:通常は地元負担は1/2。離島は国の補助率をあげている。しかし,小さな離島だから整備が不要という議論には疑問。全体として,漁場回復事業が望ましい。海底山脈によって水揚げが6倍になった事例もある。干潟回復も重要と考えている。

◆事業の最終目標に関連する議論
  • 漁業者の所得水準と生活環境が最終的な指標・目標なのか,沿岸漁業での漁獲増大なのか,遠洋漁業でたくさんとってきて自給率を上げればよいのか,目指すビ ジョンのもとで適切な予算配分を考えるべきではないのか(これによって,各事業メニューへの配分率も変えるべき)。また,多数ある漁港の中でどの漁港を整 備するか,重点化の観点も,最終的な目標が明示されていれば,自ずと決まるはずである(たとえば,漁獲高増大が目標であれば,投資に対して成果の大きくな る漁港に重点的に予算を配布する等)。
  • 高度な衛生管理対策を実現する事業の根本的な目標は,国民に提供する水産物の衛生対策なのか,輸出拡大なのか,そしてその到達目標はどこにあるのか。
  • 上記の議論に関連して,政策目標と到達指標の整合性に課題があるという認識のもとで提示されたと思われる質問が複数出た。
議論を通じて,このあたりの議論を簡潔に示すことの必要性が意識された。
 
◆結論
 縮減に決定。縮減率は10名中,20%× 3名,10% ×3名,5%× 1名,70% ×1名,要求通り×1名。結論は縮減率10%に決定。

◆残念な話
 『組合が闇組織に乗っ取られる話を聞いたことがある。どう対応するのか』。ゴシップ誌のインタビューと勘違いしているのか,おどろきの質問。
 まともではあるが,『資源環境整備事業に期待する一方,干拓や埋め立ても並行されてきた。事業で環境を壊し,回復にも事業費を投入している。環境を 保全することに取り組む必要があるのではないか。』。干拓は別事業,漁港の埋め立ては埋め立て全体のほんのわずか。話す場所を間違っている。
 極めつけは70%縮減評価。ここまでの評価をする以上は,どこがどうであるから,どれだけ縮減すべしという内容を開示と意見を開示するべき。ヒステリックで情緒的にそうしているのか,あるいは大胆かつ傾聴するべき重要な意見が示されるのだろうか。
 

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