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インフラ整備のプロセスに思うこと

 今日、我が国の基本的な社会基盤(道路、鉄道、港湾、空港、上・下水道、電気、治水・治山、廃棄物処理、漁港などなど)の整備水準は、充足状態に近づきつつあると言ってよいだろう。このうち、国民生活・経済活動を支えるために絶対に必要な基盤であるインフラ(道路、鉄道、上下水道、防災分野など)について、中村英夫氏(武蔵工業大学学長)は、これらを必需型のインフラと呼んでいる(土木学会誌2009-2月号)。戦後からしばらくの間、我が国のインフラ整備は、この必需型インフラの充足が大きな命題であった。そこでは、拡大・成長しつづける社会的需要を背景に、必需型インフラの必要性は自明であるところを起点にして、インフラ整備の社会的プロセスが構築されてきた。中村氏の言を借りることになるが、インフラ整備に関する判断は、どの事業を先に進めるかという優先度の問題となる傾向があったこと、その決定において科学的合理性だけでなく政治性にも左右されてきたという側面を持っていた。
 こうした環境のもと、公共の整備事業を推進する現場にあっては、事業者である公が発注者となり、発注者が計画、仕様・性能の決定、設計等のプロセスをほぼ全て遂行し、建設業者は決められた仕様通りに淡々と工事を行うという形態が一般化してきた(草柳俊二、土木学会誌2009-2月号)。発注者である公的機関は、建設コンサルタントに対して計画関連調査や構造設計、施工検討、建設計画などを外部委託はするものの、事業そのものに対しては、民間会社が積極的に関与して相互補完・協力のうえで事業を執行するというのではなく、受注者が指定されたとおりに業務を遂行しているかを管理するという色合いが濃い。公・民ともに、需要に追随して充足度向上を目指す環境下では、このような形態が効率的でもあったと思われる。
 しかしこのような遂行形態のもと、建設関連プロジェクトの契約形態として請負契約が標準となり、発注者に対する受注者の権利が制限されてしまう、いわゆる片務性の問題が顕在化している。もっと大きな問題として、個々の事業の必要性、目的、内容など、事業の動機・意志に関する情報が国民の評価にさらされないまま、事業遂行に関する意志決定がおこなわれがちになり、ともすると、“公共機関は建設業界と癒着して公的資金を建設事業に不当に注入している”というような公共事業に対するプロパガンダにも晒されることになる。
 アンチ公共事業キャンペーンの話はさておき、インフラ整備全体を眺めると、中村氏が指摘するように、必需型インフラの充足度向上とともにその事業比率が低下してくるのと並行して、地域開発を目的とする戦略型インフラおよび、効率化・高速化・環境向上などを目的とする効率化型インフラの整備事業比率が増大してきた。そして近年ではこれに加えて、老朽化や機能としての寿命を迎えたストックの維持・更新を行う更新型事業の増大が不可避となっている。このほかには、既存の機能をさらに高質化しようとする高質化事業の比率増大も予想されている。
 こうした分野のインフラ整備においては、“事業の動機・目的・内容の妥当性について、情報公開・合意形成を経てはじめて事業が遂行される”、というプロセスを拡充・強化しようとする傾向が進展しつつあると言ってよいだろう。その象徴的イベントが昨年の事業仕分けであったろうか。しかしその場では、社会や市民の生存に関わるリスク低減や、社会・生活基盤を維持するという自明の目的・必要性を持った事業分野についても疑念の目が向けられているようで、残念であった(時間不足・説明不足にも問題はあったが)。また依然として、事業に対して監視する機能を公的機関から国民に移そうとしているにとどまっており、インフラ整備のためのプロセスとして適切であるかどうかについて疑問を感じる。
 これからのインフラ整備において、必需型以外の内容の比重が増大する以上、今後国民は監視者ではなく主体者に近い立ち位置で、より積極的に関与しなくてはならなくなるはずである。インフラの整備が、従来どおり官が全部考えて、地域への便益を評価して、シナリオをつくって、事業予算を獲得して、事業を執行してくれるという構図ではなくなるのであるから。コンサルタントは、このプロセスを、市民や発注者と協働して互いの機能を相互補完・連携させ、事業が円滑に、かつ社会的に公正であるとともに公益を最大に実現するように遂行する、という役割を担うべきである。あるいは、そうできるように、資質を向上させることが求められることになろう。同様に、建設事業段階においても、一括請負方式ではなく、発注者・受注者が相互の機能を補完し合いながら事業・プロジェクトを遂行する形態への移行をはかることが、重要な課題となるのではないか。このようなプロジェクトの執行形態は、国際的なプロジェクトあるいは欧米では標準的なものである。また我が国においても、ODAなどで実施している国際事業は、これに近い方式で実施されている。わが国において全く未経験のプロセスではないのである。
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