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チョークポイント
Posted on Wednesday, Feb 02, 2011 16:45
チョークポイントとは,地政学上で戦略的に重要となる場所で,目的達成のために兵力等がどうしても通過しなければならず,その通行路が狭い等の環境にあって,わずかの兵力や妨害によって容易に阻止されやすい状況にあるところのことをいう.具体的には,重要な輸送路や交通路上の渓谷,橋梁,海峡などがこれにあたる.
近年では国際海上輸送路において,とくに原油輸送の安全保障における重要な課題として認識されている.たとえばペルシャ湾岸諸国で生産される原油の主要な搬出ルートであり,世界中で輸送される原油の約2割が通過するホルムズ海峡は,イラン・イラク戦争,湾岸戦争,イラク戦争など,度重なるペルシャ湾での衝突によって,その都度大きな危険にさらされながら,ときには封鎖されたり,タンカーへの攻撃を受けたりしながら,今日に至っている.2010年にはMOL(商船三井)の原油タンカーが攻撃を受けるなど,現在も情勢が安定しているとは言い難い.我が国をはじめとするアジアの工業国にとって,中東からの石油供給は産業・経済の生命線であり,そのすべてが通過するホルムズ海峡は特に重要なチョークポイントになっている.
様にスエズ運河は,中東原油の欧州・北米への輸送,アジア・欧州間の海上貨物輸送の要衝であり,世界の海上物流の約8%がここを通過している.このスエズ運河は,エジプトに対して英・仏,およびイスラエルとの間における軍事対決の場となり,第3次中東戦争(6日間戦争)時には,戦後6年間にわたり閉鎖された.現在勃発しているエジプトでの政情不安においても,スエズ運河通航における安全リスクへの懸念が再燃しているところである.
上記2箇所は,政情の不安定,軍事衝突によるリスクにさらされたチョークポイントであるが,近年大きな問題となってきているのが海賊襲撃によるリスクである.アジア・中東地域と欧州をつなぐスエズ運河航路は,紅海の出口にあたるアデン湾,およびアデン湾からインド洋に出たソマリア沖海域において,海賊の襲撃が頻発し,大きな脅威となっている.2009年,アデン湾・ソマリア沖での海賊事件は世界全体の海賊事件の50% (217件)を占め,日本関係船舶でも1件の事故が発生している.
さらに,スエズ運河航路では,日本・中国・韓国などの東アジア地域工業国へ向かう途上に,マラッカ・シンガポール海峡を通航する.この海峡は狭隘で浅瀬も多く,航行上の難所となっている.海上事故のリスクに加え,ひとたび事故が発生すると,海峡の航行に支障が生じる恐れがある.また近隣海域では,海賊による襲撃も頻発している.このように,アジア~欧州間のスエズ運河航路では,3箇所の大きなチョークポイントが存在している.
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